『CREA Traveller』(文芸春秋社刊)の仕事で、
4月に沖縄に行ってきました。
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テーマは「唯一無二の沖縄」
沖縄にしかないものを探しに行ったのです。

さて、その沖縄で最も印象に残ったことがあります。1ページもあったのに、書きたいことが書ききれなかったので、こちらでご紹介。それは、沖縄の「やちむん」です。
取材の際、皆さんの口から「やちむん」という言葉をよくよく耳にしました。「やちむん」とは、沖縄の方言で「やきもの」のこと。言葉のイメージ通り、素朴で愛らしい印象のものです。

さて、やちむんの歴史を少し。
中国、朝鮮、東南アジアとの海洋貿易を通して、独自の文化を育んできた沖縄で、荒焼(あらやち)と呼ばれる無釉の焼締陶器が焼かれ始めたのは16世紀末のこと。それに続いて、上焼(じょうやち)と呼ばれる施釉陶器が焼かれるようになったと言われています。1682年には琉球王府の命により、各地に点在していた窯が、現在の那覇の壷屋に移ることになりました。今も壷屋にはたくさんのやちむんを扱うお店や、那覇市立壺屋焼物博物館もあります。しかし1970年代になると、煙害問題により壷屋から多くの陶芸家が読谷村などの郊外へ移ることになりました。以来、読谷村が沖縄・やちむんの聖地にようになり、現在この地域で多くの陶芸家が作品作りに励んでいるのです。

その一つが私の訪れた「北窯」。松田米司さんら4名の陶芸家が運営する共同窯です。土作りから薪の準備、窯焼きまでこの4人とお弟子さんたちが協力して作業を行います。松田米司さんはこれを「沖縄ならではの、ゆいまーる精神ですよ。とにかく続けることが大切。若い人と一緒に北窯の火を絶やさずに頑張っていきたい」とおっしゃていました。DSC_1079

作業所の前には、多数の器が乾燥のために並べられており、建物の後ろには大きな登り窯があります。13連坊ある北窯の登り窯は、全国でも最大規模のものだそう。3日3晩、窯焚きは続き、その間は寝ずにずっと火の番をするのです。窯の見学が終わったら、北窯売店に足を運ぶのをお忘れなく。
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北窯で生まれた器が、所狭しを並べられています。北窯の4人の作家さんの作風は大分異なることを、この売店で知ります。でも、なんとなく似ているように感じるのは、点打文、唐草文といった模様の使い方や色の鮮やかさでしょうか? いずれにしても素朴で力強く、温かみのある器ばかりです。

沖縄の器が素敵なのは、どれもこれも日常の生活で使えるものばかりということ。この器には、こんな料理を盛りたい、という想像が実にしやすいのです。「使ってこそ意味がある」と訴えかけてくるような、そんな気迫すら器から感じられるのです。お客様用や観賞用に飾るのではなく、日々の生活でお惣菜を盛って、どんどん使うーー使ううちに風合いが出てくるのでしょうね。

さて、東京に帰り原稿のための調べものをしていて、沖縄の陶芸を語る際には柳宗悦の「民藝運動を避けて通れないことを改めて知りました。今回の参考文献として購入した柳宗悦の『手仕事の日本』(岩波文庫)を何度も読みながら、再び、北窯を訪れたいと感じる次第です。
手仕事の日本 (岩波文庫)
手仕事の日本 (岩波文庫) [文庫]